2026/10/15
1. 鼻腔をくすぐる「紀州の潮風とポン酢とスダチの薫り」
物語は、官界を辞して退路を断った原敬が、和歌山(のちの衆議院一層)の選挙地盤を固めるために和歌山港に降り立ち定めた旅館に向かうため車を拾った。
東京の喧騒とは違う、ねっとりとした紀州の潮風。そして、遠くの山々から風に乗って運ばれてくる、ほんのりと甘いスダチの匂い。原は、フランス・パリの洗練された街並みを思い出しながらも、この南国の地が持つ独特の熱気に、自らの野心が静かに燃え上がるのを感じた。
2. 吉井常也が残した「見えない礎」
原敬が和歌山に入ったとき、地元の役人や有力者たちは、原の背後に「かつて和歌山県警察部長として文字通り命を張って治安を維持し、去っていった吉井常也」の影を見たようです。
かつて知事と激論を交わし、椅子を叩きつけて抗議したほどの硬骨漢・吉井常也。その常也が婚姻の仲人を務め、「これからの日本を背負う男だ」と見込んだ秘蔵っ子こそが、この原敬である――。地元の人々は、常也への畏敬の念のままに、原を大いなる熱量で迎え入れます。原はここで、ご曽祖父・常也氏がかつて山県有朋から受けた「粋な報恩(警察部長への抜擢)」が、時を経て自分を支える強力な盾となっていることに気づき、先達の至誠に深く感謝した。
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